塩化ビニル樹脂(PVC)

汎用プラ

塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)[polyvinyl chloride, PVC]は、世界で最も生産量の多いプラスチックのひとつで、年間に4,000万トン以上も生産されています。

塩化ビニル樹脂は、可塑剤を加えて柔軟性を付与した“軟質塩化ビニル樹脂”と、可塑剤を加えていない“硬質塩化ビニル樹脂”に大別されます。

軟質塩化ビニル樹脂は、農業資材(ビニールハウスなど)、壁紙(クロス)、電線の被覆などに、硬質塩化ビニル樹脂は、建築資材(樹脂デッキや雨樋など)、上下水道のパイプなどに広く用いられています。

製造法

塩化ビニルモノマーの合成

代表的なものに、石炭を原料にする合成法と石油を原料にする合成法があります。

20世紀前半までは石炭化学が盛んで、石炭をスタートとする合成ルートが使われていましたが、近年ではほとんどが石油を原料とした製法になっています。

石炭を原料とする合成法

石炭と石灰石を強熱して得られるカルシウムカーバイドに水を加えてアセチレンガスを合成

得られたアセチレンガスに塩酸を反応させて塩化ビニルを合成

 

石油を原料とする合成法

石油ナフサを分解して得られるエチレンに塩素を反応させて塩化エチレンを合成

さらに塩化エチレンを脱塩酸して塩化ビニルを合成

 

塩化ビニル樹脂(塩化ビニルポリマー)の合成

塩化ビニルモノマーに過酸化物触媒を加えて重合を行います。

重合の形態により、懸濁重合や乳化重合などがあります。

 

塩化ビニル樹脂の特徴

塩化ビニル樹脂は高分子鎖に塩素原子を含むことで、さまざまな特徴的な性質を有しています。

塩素原子による強力な電子吸引作用により、塩化ビニル樹脂は極性を有し、そのために顔料や可塑剤等の化学物質との相溶性が高いのが特徴です。また、塩素の分子量が大きいため、樹脂骨格全体に占める塩素の重量割合が高く、難燃性に有利に働きます。

 

塩化ビニル樹脂のメリット

  • 着色性良好
    (顔料等の添加による着色だけでなく、印刷などの加飾もしやすい)
  • 硬質から軟質まで任意に硬さを調整可能
    (可塑剤の添加量を調節)
  • 難燃性を有する
    (塩素を多く含むため燃えにくい)

塩化ビニル樹脂のデメリット

  • 熱安定性が悪い熱により分解・劣化しやすい材料ですが、配合時に“安定剤”を加えることで成形時や経時変化による分解・劣化を抑制することができます。
  • 耐熱性が低めで熱変形しやすい
  • 可塑剤のブリード(軟質塩化ビニル樹脂)

筆者が子供の頃、消しゴムをケースにきちんと収納せずに直接プラスチック製の筆箱に入れてしまい、筆箱が溶けて消しゴムとくっついてしまったことが何度も(苦笑)ありました。

プラスチック消しゴムの素材には軟質塩化ビニル樹脂がよく使われており、長時間筆箱のプラスチックに接していると軟質塩化ビニル中に含まれている液状の可塑剤(柔らかくする成分)が時間の経過により消しゴムの外にブリード(染み出し)てきて、筆箱のプラスチックに移行し、筆箱を溶かした(柔らかくした)のです。

このように、軟質塩化ビニル樹脂は、可塑剤によるブリードに注意する必要があります。
最近では特殊な可塑剤を使用し、ブリードしにくい軟質塩化ビニル樹脂も開発されています。

 

塩化ビニル樹脂の用途

硬質塩化ビニル樹脂

  • 水道管、下水道管
  • 建築資材(樹脂サッシ、樹脂デッキ、雨樋)
  • 電設資材(電線被覆、電線配管)

 

軟質塩化ビニル樹脂

  • 農業資材(ビニールハウス、ビニルシート)
  • 建築資材 (クロス、クッションフロアー)
  • ファッション雑貨(バッグ、財布)

ブランド物の高級バッグや高級財布の中にも、塩化ビニル樹脂が使われているものがあります。着色性に優れデザインの自由度が高いだけでなく、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性に優れるなど、日常使用時における塩化ビニル樹脂の耐久性の高さが評価されているのでしょう。

 

塩化ビニル樹脂関連企業

塩化ビニル樹脂メーカー・サプライヤー

ポリ塩化ビニル(PVC)/メーカー・サプライヤー
国内外のポリ塩化ビニル(PVC)プラスチックメーカーを紹介します。国内 ポリ塩化ビニル(PVC)サプライヤー大洋塩ビ重合度500(TH-500)から3800(TH-3800)まで幅広いグレード展開。カネカ1950年に量産を開始。カネビニール...

 

塩化ビニル樹脂 添加剤メーカー・サプライヤー

  • 安定剤
塩化ビニル樹脂(PVC)安定剤/メーカー・サプライヤー
塩化ビニル樹脂(PVC)安定剤メーカーを紹介します。塩化ビニル樹脂は熱分解しやすいため、一般的に塩化ビニルポリマー単独では用いられず、分解を抑制する目的で安定剤が添加されています。安定剤には鉛、スズ、バリウムなどの金属成分を含む化合物や、酸...
  • 可塑剤
プラスチック用 可塑剤
プラスチックを柔らかくするために加える添加剤。熱可塑性プラスチック、なかでも塩化ビニル(PVC)樹脂によく用いられている。可塑剤添加によって柔らかくなった塩化ビニル樹脂は軟質PVCと呼ばれ、電線の被覆材やビニルハウス、バッグや財布の合皮、プ...

 

塩化ビニル樹脂関連 業界団体

塩ビ工業・環境協会(Vinyl Environmental Council, VEC)

日本ビニル工業会(Japan Vinyl Goods Manufacturer’s Association)

塩化ビニル管・継手協会(Japan PVC Pipe and Fittings Association, JPPFA)

塩化ビニル環境対策協議会(Japan PVC Environmental Affairs Council, JPEC)

 

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